週刊現代

週刊現代で今薬を飲むな、手術をするなという記事がでて、患者さんからよく薬について質問を受けるようになりました。この号がたくさん売れたので第5弾まで用意するようです。また現代が売れたのでポスト、文春も同じようなネタで記事を書くようです。

薬というのは日本においては何年もかけて効果、副作用、最終的なエンドポイントである、心筋梗塞、脳卒中、死亡例などを二重盲検法という投与した医者もどっちが新しい薬かどっちが古い薬か知らされずに患者さんに処方し多数の施設から多数の投与例を集めて判定をいたします。この時点で副作用が多く出れば途中で治験は中止になります。つまり新しい薬であればあるほど、効果的で副作用が少なく、飲み方(朝か夕か、空腹時か食後か)によっても差がなくなったりするわけで、新しいメリットがなければ次の薬は世に出てこないわけです。薬にはもちろん副作用が出る人がいます。副作用がでる方は多くはありませんし、その副作用の発現を早く知るために定期的に検査をしているわけです。薬の発売後も副作用の調査、報告がきちんとなされています。
 高血圧、高脂血症、糖尿病などはその病気自体に対してよりもその病気によっておこされる致死的な病気である、心筋梗塞、脳卒中、腎不全などを予防するために治療を受けているわけです。薬はこのような病気への進行が少なくなったと判断されたから発売されたわけです。症状がないからといって、飲まないでいると命に係わることになります。命を落としても週刊現代は保障してくれるわけではありません。脳動脈瘤を腫瘍と言い換えたり、高齢者で認知症のある方の糖尿病コントロール基準が変わったことを「認知症」の文字を隠して記事にしたりして意図的に不安をあおっています。
 また癌に対して手術を受けるなとの記事もありました。残念ながら今の医学では根治的に治すのは手術が一番です。もちろん、放射線療法・化学療法のほうが効果的な血液がんなどもあります。また新薬であるオプジーボがいくらいい薬だといっても2割の人の寿命を2年延ばすだけです。まず、予防する(たばこを吸わない、ヘリコバクタピロリを退治する。B型、C型肝炎を治す、子宮頸がんワクチンを受けるなど)そして早期発見して浸潤・転移する前にに手術で病巣を摘除することが大事です。不幸にして完全切除ができなかったり、手術の後遺症が残る方もいますが、そのような方だけを例示して手術してはならないというのは暴言以外の何物でもありません。取材協力費という名目でお金をdっせば日本の名医100人に名前を載せますというのは詐欺ですよね。本当に健康をいうのなら自分の週刊誌に煙草やお酒のコマーシャルは載せるべきではありませんし、HIVやC型肝炎の感染機会を増やす風俗記事などは載せるべきではありません。週刊誌を売るために事実を捻じ曲げてはいけません。先日は天下の朝日新聞までが高濃度ビタミンC療法について1面全部を使って鳥越さんのインタビュー記事を載せました。紙面の一番上に小さく全面広告と書いてあります。効果がないとわかっている高価な治療を、お金さえもらえればまるで朝日新聞が全面的に推薦しているような詐欺行為の片棒を担いでいいのでしょうか?マスコミの姿勢が問われています。
 いまはやりのコンドロイチン、コエンザイムQ10などはもともとは医薬品でした。以前は今ほど薬の認可までうるさくなかったので、このような効果のない薬も保険採用されていました。あまりに効果がないので現在は医療現場では使われていませんがテレビ特にBSではコンドロイチンを飲むと膝の痛みがなくなるようなコマーシャルをしています。またそれを大手の薬剤メーカーが発売していたりします。大手のメーカーは襟を正してちゃんと効果のある薬だけを責任もって開発、発売してほしいものです。EBM evidense based medicineといいます。ちゃんと実証されたデータに基づいて医療側は投薬、治療しています。マスコミも製薬会社も目先の利益にとらわれずに、公器としての責任を果たすべきです。しばらく薬を飲まなくなって来院されたときは血圧200以上、LDLコレステロール200以上になってあわてていらっしゃる方が増えています。またそのために狭心症発作や高血圧性脳症になられた方もでているようです。薬は自分勝手に中止せず、主治医とよく相談して飲みましょう。もし、その薬がどうしても不安ならそれに代わる薬もあります。急にやめるより少し効果が落ちてもそのほうが致死的な病気への進行はやめるよりは抑えることができます。
 なぜ、この薬が必要なのか、飲まなければならないのか よく考えてみましょう。
週刊誌は売れればいいのです。でも命を落とすのはあなたかもしれません。


夏風邪
夏風邪とは夏場の風邪症候群のことです。夏場の風邪は冬場の風邪と違い比較的軽くすむことが多いようです。これは原因となるウイルスが違うことによります。冬場はインフルエンザを筆頭にパラインフルエンザ・RS・ライノ・コロナウイルスによるものが多く見られます。SARSの原因はこのコロナウイルスの新型と言われています。夏場はエンテロウイルス(これにはエコーウイルス、コックサッキーウイルスが含まれます。)アデノウイルスによる風邪が多くなります。

 お子さんはこの時期に手足口病、プール熱、ヘルパンギーナなどにかかりやすくなります。
手足口病はコックサッキーウイルスやエンテロウイルスによっておきます。手のひら、足の裏、口の中に小さな周りが赤い水ぶくれができます。口の中が痛くて食べられなくなることもあります。
プール熱は咽頭結膜熱とも言われアデノウイルスによって起こります。必ずしもプールでうつるとは限りません。高熱が4〜5日続き、結膜炎や咽頭炎を併発します。アデノウイルスによる流行性角結膜炎もこの時期に多く見られます。
ヘルパンギーナの原因はコックサッキーウイルスで、高い熱が突然出て、のどの奥に小さな水ぶくれができます。とても痛くなり食事どころか水分もとれなくなり脱水症状を来すことがあります。
エンテロウイルス等による髄膜炎(無菌性とかウイルス性髄膜炎と呼びます)もこの時期に見られ、時に大流行することがあります。ほとんどの場合何の後遺症もなく治りますが、ヘルペスウイルスや髄膜炎菌による髄膜炎の場合は命に関わることもあります。熱に加え、頭痛、嘔吐、ぐったりするなどいつもと違うときは、すぐに病院にかかりましょう。このような病気は必ずしも子供だけの病気ではありません。大人も注意が必要です。プール熱や流行性角結膜炎などは感染力が強く登園登校禁止となります。ヘルパンギーナや手足口病も他の子供にうつす可能性はありますが、ウイルス排泄期間が長く登校禁止による予防効果は不十分であること、不顕感染が多いことなどより症状が軽ければ登園登校は可能です。ただし命に関わることもありますのでちゃんと小児科受診しましょう。

夏風邪は暑さによる脱水や寝不足、冷たい物の取りすぎなど体調不良・抵抗力の低下が引き金になります。

最近ではクーラーにより冷やしすぎるのも免疫力を低下させる要因になっています。外気温との急激な温度差にからだはついて行けません。外気温との差は5度以内が最適と言われます。冷やしすぎに注意しましょう。

ウイルスのほとんどは経口・経気道感染、飛沫感染です。帰ったら必ず手を洗うようにしましょう。これは感染性胃腸炎の予防にもなります。

ペットボトルの回しのみなどはやめましょう。プールの後は目・手を洗い、口をすすぎましょう。また、バスタオルなどの貸し借りはやめましょう。

 「馬鹿は(冬の)風邪引かない・夏風邪は馬鹿が引くなんて」馬鹿にしていると実は重い病気だったなんて事もあります。結核や肺癌などの他、まれな病気ですが猫等からうつるQ熱・インコなどからうつるオーム病や、この時期特有のトリコスポロンクタネウムというかびが原因の夏型過敏性肺臓炎などもたまに見受けられます。なかなか風邪の症状が取れないときは必ず医療機関を受診しましょう。野良猫が納屋で子供を産んだ、オームやインコを飼っている(特に最近死んだ時は要注意)、家がかびくさい、干し草をいじってから咳が止まらない(農夫肺)とか温泉に行ってから呼吸が苦しい(レジオネラ感染症)沖縄などでアウトドアスポーツをしてからだるく熱がでる(レプトスピラ感染症)川遊びをしてから何かにさされた痕ができ熱が下がらない(つつが虫病)など症状だけでなく、最近起きたことや飼っているペットの事、お仕事の内容などをちゃんと医師に伝えることも大事です。

 夏風邪を引かないようにするには十分寝ること、冷たい物を取りすぎて栄養不足や下痢を起こしたりしないようにすること、エアコンを効かせすぎないようにするまたは軽いショールや膝掛けを用意する、ビタミンCを十分にとる(内因性インターフェロンを増やし、ウイルスに強くなると言われます)などを心がけましょう。

もし風邪を引いてしまったら、十分栄養をとり、休むこと。脱水を起こさないように水分を十分に取る!大事なことです!

SARSだけでなくいろんな病気が世界ではやっています。蚊によって媒介されるのは日本脳炎ばかりではありません。ニューヨークなどではウエストナイル熱が流行しました。いつ日本に入ってくるかわかりません。外にある古いタイヤや空き瓶など、水がたまる様なものは早く廃棄しましょう。

 環境の整備と毎日の手洗い・睡眠不足や栄養不足を起こさないようにするなどの生活習慣の改善はいつでも風邪だけでなくいろいろな感染症の最大の予防です。

 さぁ、体調を整え、楽しい夏を送りましょう。